はじめに

2023/2/27

 馬主、および一口馬主にとって、馬体からその馬の能力を見抜くことは良い馬に出資するために欠かせない。 そのような“相馬眼”を身に着けるために、現在も多くの人々が馬体と向き合い、繰り返し模索しながら自身の観察力を追及している。 競馬関係者からそうでない者まで、様々な側面から馬体評価を行っているが、多くの場合、その評価は定性的なものである。 定性的な評価とは評価者個人の感覚を基準とした評価のことを指し、相手にその馬の特徴を即座にイメージさせることができる点がメリットといえる。 よく見かける、「繋ぎが立っている」、「顔が大きい」、「肉付きがいい」、などの表現は定性的評価の代表例であり、それによって我々はその馬の特徴を頭の中にイメージすることができる。 一方でこのような定性的評価は、個人の主観・感覚に大きく左右される、つまり客観性に欠けるという大きな問題点がある。 したがって、他者との間で認識が合わなかったり、過去の自分の評価にすら矛盾したりする可能性があり、結果として正確な評価が妨げられる。

 このような問題は、定量的に馬体を評価することで回避することが可能である。 定量的な馬体評価とは、馬体を計測することで数値化し、その数値に基づいて馬体を評価するアプローチである。 数値を用いることで、定性的な評価に散見するあいまいな表現・評価等は一切排除され、全ての受け手が共通の認識を得ることができる。 さらに、得られた数値は蓄積されることによって統計データとして扱うことができるため、馬体の特徴と将来のパフォーマンスの関係について統計的に議論することが可能となる。 これにより、今まで気づかなかった新たな知見や法則等が発見されることも期待でき、生産・育成等を含む競馬界全体への貢献も考えられる。 このような背景から、定量的な馬体評価の手法を確立・普及することが必要とされている。

 私は以上の背景を踏まえ、定量的な馬体評価がより一般的な手法として認知されること、馬主や一口馬主の方へのサポート、さらには生産・育成等へ新たな知見をもたらすことを目指し、以下に示すことを行っている。 1つ目は、馬体の定量化ツール(計測ツール)の公開である。このツールはサイト上で、馬体の各部位を簡単に数値化することができる。 さらにここで得られた数値が、他の馬と比べて大きいor小さいのか、また平均値とどれだけ離れているのか、といった情報も公開する。 2つ目は、馬体の各部位と将来のパフォーマンスの関係に関する解析である。 本解析は過去のセール等に上場した馬の馬体写真を基に計測した統計データを利用して解析を行っている。 ここでは、従来の定性的評価にみられる主観や感想のようなものではなく、統計データから読み取れる事実に従った議論を公開している。


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